銀の匙 Silver Spoon
「銀の匙」は、進学校の高校受験に失敗した八軒 勇吾が、学力競争と高圧的な父親から逃れるようにして入学した寮制の「大蝦夷農業高等学校」通称「エゾノー」で繰り広げられる酪農青春グラフィティです。
[rakuten:bookoffonline:13844942:detail]原作者の荒川弘は、「鋼の錬金術師」を描いた人です。ジャンルが全然違うのでアニメを見ていて最初気づきませんでしたが、途中から「絵がハガレンと似てるなー」と思って、エンディングのスタッフロールで知りました。
この「銀の匙」の中で、八軒が食肉用に豚を育てる話があるのですが、そのことについて自分でも考えてみました。
八軒、「豚丼」を立派な豚に育てる
産まれたばかりの子豚を世話することになった八軒。いずれは食肉になることが決められている子豚ですが、その中に一際体が小さな子豚がいました。
産まれたばかりの子豚は、兄弟たちと生存競争をして、産まれてすぐ自分専用の乳首を決めます。頭側は母乳の出が良くて、おしりに向かうに従って母乳の出がよくなくなっていきます。体が小さな子豚はおしり側の一番端っこの乳首に追いやられてしまったので、他の兄弟に比べて体が小さいのです。八軒が、乳の出かいい乳首に移動させても、子豚は自分専用の端っこの乳首に戻ってしまいます。
八軒は、受験競争に負けた自分と重なる部分があったこともあり、気にかけるようになります。そして、立派な豚に育てるべく、その子豚に「豚丼」と名付けて愛情込めて育てていくことを決意するのです。
「名前を付けると別れが辛くなる」「食肉になることが確実なんだから後がしんどい」などと同級生たちから忠告される一方、「いいんじゃないか、大いに悩め」とアドバイスする先輩もいます。悩んで悩み抜いて考えて答えを見つけろ、ということです。
3ヶ月後、食肉用として出荷することになるのですが、八軒はバイトで貯めたお金で「豚丼」を一頭まるまる購入することを決意して、ベーコンやスカイツリー豚丼になって美味しくいただくことになります。
50キロの肉の塊になって八軒の元へと戻ってきた「豚丼」ですが、アニメの中でもっと豚肉料理を紹介して欲しかったです。
個人的には豚の角煮が好きです。柔らかく煮えたら、そのまま食べたいところですが、そうすると脂で胃がもたれます。一度冷蔵庫で冷やして表面の白く固まった脂を取り除くのがポイントです。その脂は捨てずにチャーハンを作る時にラードとして使います。
豚のPちゃんと32人の小学生 命の授業900日
命について考える授業は、実際に実践例が存在します。
1990年(平成2年)7月から1993年(平成4年)3月の2年半にわたって、大阪のある小学校で豚の飼育を通じて命の尊さについてクラス全員で考える教育が行われたことがあります。
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のちに書籍化・映画化もされましたが、1993年7月12日にはフジテレビ系の『今夜は好奇心!』の中で放送され、凄まじい賛否両論を巻き起こしたそうです。
内容を掻い摘んで説明すると、4年生を担当する新任教師と32人のクラスメイトらは、いずれはクラスで食べるための家畜として豚を育てることを開始します。名前は「Pちゃん」と名付けて飼育していくのですが、次第にペットとしての愛情が芽生えはじめて、家畜ではなくペットとして接するようになります。6年生になってディベートが始まります。Pちゃんをこのままペットとして育て続け下級生へ引き継ぐのか、それとも食肉加工場へ送るのか、何度議論をしても決めることができません。卒業式が近づいてくる中、卒業式前日になって、自分たちで始めたことだから自分たちで完結させるということで意見は一応のまとまりをみせます。32人もいるので、納得しない子も中にはいたと思います。それも授業なのでしょう。
食肉センターで枝肉加工された豚肉をクラス全員で食べることで命の授業は終わりを迎えるわけですが、感謝を込めて笑顔で「美味しい」と食べる生徒、泣きながら食べる生徒、食べられない生徒、食べられない生徒に声をかける生徒など、様々な感情が入り乱れます。
自分だったらどうだろうか。今の自分と小学生の自分とでは見える部分と見えない部分があって、物事の捉え方が違う部分はあるだろうけれど、根本的な考え方はそんなに変わらないと思います。そう考えると…でも、悩みます。わたしは泣いてしまうだろうか、食べることはできるだろうか…
まとめ
アニメで創作物として見るのと、現実のドキュメンタリーとして見るのとでは、やはり感じ方が異なります。「銀の匙」ではアニメを見ていて"豚の角煮が食べたい"と思いましたが、Pちゃんの話ではそんなこと思いませんでした。
自分が都会育ちなのか、それとも田舎育ちで日常的に豚、牛、鶏などが身近に感じられる環境なのかでも違ってくると思います。これを読んだあなたは、何を感じ、どう思っただろうか。